日本と同様に電力会社を選択できる米国の電力市場では、調達慣行は日本とは大きく異なります。
日本との比較のため、テキサス州とペンシルベニア州の2つの米国市場を選びました。両州とも日本の自由化市場モデルに似ています。電力自由化以前に供給を受けていたユーティリティと呼ばれる大手電力会社(以下ユーティリティ)から新たに参入してきた電力会社に切り替えた顧客の割合は、テキサス州で100%、ペンシルベニア州で95%です。これには日本の多国籍企業の米国子会社も含まれます。
米国の大口需要家(特別高圧・高圧)の最も一般的な電力調達方法は以下の通りです。
電力会社が顧客に提供する価格リスクヘッジ方法
- 完全固定価格契約
1年、2年、または3年先の全電力使用量に対して事前に電力単価を定める固定価格契約 - ブロック&インデックス
顧客が一部の使用電力量については事前に電力単価を固定し、、残りの使用量ついては事前に固定化しないで月毎に決まる変動価格で支払う契約。
変動価格としては、卸電力取引所のスポット価格や価格情報会社等が発表する価格を用います。 - ローリングヘッジ(あるいは段階的ヘッジ)
顧客が数年にわたって様々な時期に将来使用する電力量について少しずつ段階的にヘッジ(将来の電力単価の固定化)を行う契約。通常、次年度に使用する電力については、前年度に100%の固定化が図られるように、3年前に想定使用量の30%、2年前に同60%というように、期間が近づくにつれてヘッジ量(固定化量)を段階的に増やしていきます。
米国のほとんどの大企業は、ヘッジすべき最低割合を義務付けるリスクガイドラインを設けています。これらのガイドラインは電力調達だけでなく、会社の財務結果に影響を与える可能性のあるあらゆる原材料の購入に適用されます。
米国の電力市場自由化の初期段階では、大口需要家はユーティリティにとどまる傾向がありましたが、ユーティリティは価格変動リスクを「燃料費調整」または「規制当局への料金改定申請」を通じて顧客に転嫁するため、顧客は電力の価格変動リスクを管理することができませんでした。そして、この価格変動リスクを管理する能力が、米国の大口需要家が新たに参入してきた電力会社に切り替えた理由です。
米国の大口需要家が電力をヘッジする上位3つの理由
- 変動する電力価格の影響を排除して、予算編成と損益管理のための価格の確実性を達成するため
- 短期的な電力価格の急騰によるコスト増加を自社の顧客に転嫁できないため
- 電力価格のヘッジが内部のリスク管理基準を満たすため